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防風林「自治体は誰のために何の目的で運営するべきか【2015年9月1週号】」

 ▼ある地方都市郊外にある住民自治会。ここを構成する十数地区で、世話役を務める班長さんを集めた会議での一幕。閉会の間際にある班長がした質問が波紋を呼んだ。町内会費の徴収で各戸訪問した際、高齢者世帯の脱会と新規入居世帯の入会拒否が同時に発生したという。
 ▼「脱会を思い留まらせたり、新規入居者の入会勧誘も班長の仕事なのか? 会長や役員がやるべき仕事ではないのか?」と。会長は「各班の班長が対応すべき仕事だ」と回答。これに対して、ほかの班長も「責任を班長に負わせるのか」と反発した。
 ▼約40年前の宅地造成を契機に入居した世帯主の多くは、70歳を超える。高齢世帯の脱会理由は、生活を年金に頼る中で年会費は負担のうえ、班長がやるべき仕事は頻繁で、夏祭りや運動会などは体力的に無理だという。
 ▼不動産価格が落ち着き、若い世代の新規入居者は増加傾向にある。「地縁も血縁もない地区に住居があるだけで何故、会費を払ってまで自治会に加入し面倒なことをしなければならないのか?」。これが入会拒否理由。
 ▼新・旧住民の自治会への参画意識の低下はよく耳にする。恒例行事をなぞるだけ、年齢構成や会員の意向に配慮しない自治会運営、会長・役員・班長それぞれの責任回避的な思考、若い世帯主の希薄な連帯意識、どこの自治会でも抱える課題か。会議進行が滞る中、ある男性班長が「いつ来るかわからない大震災が発生した時、住民が頼れるのは自治会しかない。全住民が漏れなく加入できる自治会のあり方を役員も持ち回り班長の私たちも真剣に考えるべきだ」。不毛な議論の最後の一言、拍手で閉会した。