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防風林「農産物輸出は国内需要喚起も含め戦略的に【2016年5月4週号】」

 ▼世界最強と呼び声の高かった帝政ロシア・バルチック艦隊に対し、アジアの小国・日本は、東郷平八郎司令長官率いる連合艦隊で日本海対馬沖に待ち受けて撃破。その日が111年前の1905年5月27日。
 ▼「敵艦見ゆとの警報に接し連合艦隊は直ちに出動、撃滅せんとす 本日、天気晴朗なれど波高し」との打電から、世界戦史に残る日本海海戦の幕が切って落とされた。「Z旗」がはためく旗艦・三笠から、各艦船の搭乗員に「皇国の興廃この一戦にあり 各員一層の奮励努力せよ」との鼓舞、熾烈(しれつ)極まる砲・雷撃を応酬し敵艦隊は壊滅、一方的な大勝だった。
 ▼そして現在、政府はTPP(環太平洋連携協定)合意を受け、関税撤廃が日本の農林水産物や食品を世界に売り込むチャンスだとして、農林水産業の輸出力強化戦略を決定した。2020年までに輸出額1兆円の前倒し達成を目標としたこの戦略は、主役である農家や食品業者の挑戦・創意工夫などの意欲的な取り組みに対して、政府が「側面支援」する。
 ▼日露戦争は日清戦争後の三国干渉への屈辱を糧に、政府が用意周到に外交・財政・軍事を強化する総力で立ち向かった。関税撤廃の恩恵は相手国も同じ。今、世界的な日本食ブームだが、価格競争だけ見ても国内産地の打撃は大きい。輸出力強化のほか国内需要を喚起する食料供給体制が大事だ。「農国の興廃この一戦にあり」の心境で、官民挙げ「Z旗」を揚げるときでは。