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防風林「若きも老齢者も担い手なりの努力が必要【2016年7月3週号】」

 ▼新しい海へ漕(こ)ぎ出す船を今、動かすことが出来るのは古い船乗りではなく新しい船乗りだ。なぜなら古い船乗りは新しい海の怖さを知っているから(意訳)――。1970年代にフォーク界の旗手として当時、若者に支持された吉田拓郎の「イメージの歌」の一節。大人世代に対する抵抗の叫びだった。
 ▼この曲を聴き拓郎に心酔、傾倒した若者も、今や第一線を退いた年齢に違いない。国内の基幹的農業従事者数(農水省調査)は65歳以上が60%。高齢化という構造的変化はないものの、新規就農や農業女子などの進出で40歳以下は昨年より1%増加した。今後、若手農家が漕ぎ出した農業には災害や価格低下などの遭遇も予想されるが、座礁せずに局面を乗り切ってほしい。
 ▼高齢農家でも新しい農業で頑張れる、そう教えてくれたのが数年前に出会った80歳手前の農家。県が開発した果樹仕立て新技術の実証試験を担っていた。「ご高齢なのに新技術は骨がおれませんか?」と言葉を掛けた。
 ▼「体がきついから新技術を導入して、ラクをする。当然なことだと君は思わないか?」。"目から鱗(うろこ)が落ちる"という言葉が、本当に存在することを初めて気づいた。翌週、現地に飛ぶと、地元で最高齢の担い手だった。
 ▼「息子が職場で定年を迎えて農地を引き継ぐまで、私は辞めない。それまでの中継ぎ役だからだ」。今も元気に農業に従事しているに違いない。年齢制限のある就農支援交付金に頼らずとも、高齢者により生かされている地域は多い。