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防風林「感情移入しやすいスポーツ、国家や企業に踊らされぬよう【2016年8月1週号】」

 ▼競技者によるドーピング違反に国家の関与が指摘されたロシアの選手団は、一部の競技を除きリオデジャネイロオリンピック(五輪)への出場が困難視され、平和の祭典に暗雲が立ち込める。五輪をスポーツへの意識高揚の場とするのはよしとして、国家主義へ扇動したり、まして不正は認め難い。
 ▼1936年のベルリン大会では、ナチス政権が五輪を人種差別主義と軍備拡大化へ導いた黒い歴史がある。現代でも、開催都市招致で国際オリンピック委員会委員への賄賂疑惑が報道される。国家の威信や商業主義的な思惑が絡んでは、崇高な五輪憲章も黒い霧でかすんでしまう。
 ▼2020年の東京大会での追加種目に、野球と空手といった日本が金メダルを確保できそうな競技を加え、サーフィンのほかスポーツクライミングも提案されている。この競技は、90度以上もの傾きのある人工壁に模擬石を取り付け、腕力と脚力を使って体重を移動しながら登る。
 ▼国内ではスポーツジムなどにしかないが、五輪候補となり徐々に増えている。体育施設に詳しい方によると、欧米では学校施設に人工壁が設置されているのが一般的、授業のほか休憩時間に競って挑戦しているという。
 ▼五輪競技は、世界への衛星中継やネット配信でいや応なしに人気が高まる。先の関係者は「追加種目に決定すれば、多くの学校に人工壁が設置されるのでは」と話す。スポーツには人の感情に訴える魔力が潜む。国家や企業の思惑には、踊らされないよう心掛けたい。