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防風林「稲WCSを現実にしたのは改造農機から【2016年9月4週号】」

 ▼米の需給緩和策として現在、飼料用米の生産と給与体系が確立されつつある。一方、子実と茎葉を同時にサイレージ化する稲WCS(発酵粗飼料)研究の黎明(れいめい)期にあった十数年前、給与試験を実施するある県の試験場で見た改造農機が実用化の予感を感じさせた。
 ▼当時、飼料サイレージの趨勢(すうせい)は、バンカー式からスタック式へ、さらに欧米技術のラッピング式が普及しつつあった。牧草ロールをぐるぐると回転させフィルムを巻いて、発酵を促す。
 ▼この前処理は通常、牧草を刈り倒し、圃場で予乾の後にベーラーで集めロール状に成形する。しかし、WCS用の稲を同じ工程で行うと、子実が落下したり、降雨後の泥田では土の付着により飼料品質の低下につながり、専用機開発が望まれていた。
 ▼その改造農機は、コンバインの脱穀部をべーラーに付け替えた"耕畜合体"の異様な外観。刈った稲を地面で仮置きせず直接、後方へ搬送しベールを成形する。後に農研機構と企業が共同開発し、緊プロ事業で世に出たコーンサイレージ用収穫機の梱包(こんぽう)ネットを応用、より子実落下を防ぐことで製品化し普及した。
 ▼試験場では、コンバインの走行部にフィルムを巻く装置を載せた自走機まで自作していた。農水省が稲WCSの方向性を示す夜明け前、円滑な給与試験を行う目的で改造農機まで作り、稲WCSの機械化体系を確立させていた先見性には感心したのだった。開発者は農機改造が得意な技術職員。一つのひらめきが次代を開く時もある。