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=新年号企画=うってでる農業(2-5面)【2019年1月1週号】

 今、政府は「農業競争力強化」などの美名のもと、農地集積・団地化、輸出拡大など、若い担い手に「スマート農業」という魔法の杖(つえ)を握らしめ、「攻めの農業」の実践による将来像を描いている。対局にある高齢者や小規模経営は?島しょ部や傾斜地などの条件不利地は――。どんな経営をしていようと、意欲と創造力さえあれば、地域にしっかり足を付けた姿勢で、力強く「うってでる」ことはできるはずだ。2019年の新年号特集テーマは「うってでる農業」。地域から派生する活力。そんな3事例を紹介する。

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集落が結束 ―― どんどんファーム古殿・鹿児島県南九州市

190108_1.jpg 薩摩半島最長を誇る万之瀬川の、清らかで豊かな水に恵まれた鹿児島県南九州市川辺町。町の中部に位置する古殿地区は、同川が運ぶ水と肥よくな土の恩恵を受け、県内有数の米どころとして育まれてきた。一方で過疎化や高齢化を見越した活動に県内でいち早く着手。「農事組合法人どんどんファーム古殿」(中間幸敏代表=74歳)のルーツとなる、むらづくり委員会を約40年前に結成した。非農家も参画し一人一人が可能な範囲で活動に携わり、県内初の集落営農に進化させ現在も継続させている。同時期に、伝承文化の太鼓踊りを復活させる「古殿太鼓踊保存会」を発足。現在は2年に1度の奉納踊りを続け、後世につなげている。地域営農と伝統継承が、組織を維持する源になっている。

〈写真:「地域の農と文化を次世代に!」。中間代表(左から3人目)とメンバー〉


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女性の戦略 ―― 陽気な母さんの店・秋田県大館市

190108_2.jpg 農家のお母さんたちの明るさとチームワークを発揮して客足が途絶えない直売所が注目を集めている。体験交流型直売所を掲げる秋田県大館市曲田の「陽気な母さんの店」では、農業・農村の魅力や食を提案しながら、農産物販売をはじめ、農業・料理体験などの多彩な取り組みで人を呼び込む。直売所には1日平均で300~500人が訪れ、年商は2億円を超える。季節ごとに旬を迎える野菜を詰め合わせた宅配事業も展開。県内外に発信する攻めの姿勢で売り上げ増を図る。「農家であり、消費者でもある私たち母さんだからできることがある」と、地域農業を盛り上げている。

〈写真:直売所に並ぶ野菜を手にする石垣一子代表(左)と正会員ら母さんたち〉



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若者が挑戦 ―― J'Pumpkin・長野県佐久市

190108_3.jpg カボチャで地域を盛り上げたい──長野県佐久市清川の株式会社J'Pumpkin(ジャ・パンプキン、大塚悠代表=31歳)は、カボチャの大規模栽培に取り組み、地元に一大産地を築こうと挑戦している。耕作放棄地を積極的に借り受けて規模を拡大し、昨年は25ヘクタールを栽培。大塚代表と2人の正社員による分業で効率的な生産体系を構築し、高品質・安定出荷に力を注ぐ。地元農家にカボチャを栽培してもらい、全量を買い取る仕組みも構築。生産者を増やしながら、5年後の栽培面積100ヘクタールと「農業で栄える地域」を目指す。

〈写真:次作に備えて耕うん中のカボチャ畑で。左から宮澤祐貴さん、大塚悠代表、掛川佳孝さん〉



(2-5面)