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防風林「あと始末を怠ってきた報い【2019年6月3週号】」

 ▼ショートショートの神様と呼ばれた星新一氏の作品に「おーい でてこーい」がある。ある村で大きな穴が見つかり、「おーい」と叫んでも、石を投げても反応がない。ゴミを捨てると底なしで、これは便利、と原子炉のかすまであらゆるゴミを捨てていると......、という展開だ。
 ▼海洋プラスチック汚染の問題を調べると、作品と現実が重なっているように感じる。プラスチックは、軽くて丈夫、安価な素材として大量に生産、消費されてきた。ただし、自然分解しにくく、ゴミになると処理が厄介だ。2019年版環境白書では、1950年以降の生産量は83億トン超で、廃棄量は63億トンとの報告があると記述する。毎年、800万トンが海洋に流出しているとの試算もあるという。
 ▼海洋に流出したプラスチックは、誤食でクジラなどの海洋生物に被害を及ぼすとともに、漂流中に微細片のマイクロプラスチックとなって汚染が広がる。近年は、北極や南極でも微細片の浮遊が観測されている。
 ▼問題解決には、新たなゴミを出さないよう、回収・再利用の仕組みを構築し、可能なものは代替品への移行を進めるほかない。使い捨て容器やレジ袋の使用中止、代替品への転換など、対応を進める企業も出てきた。しかし、世界全体で問題意識を共有し、連携して対応しなければ根本的な解決にならない。
 ▼6月下旬に大阪で開かれるG20サミットでは、海洋プラスチックの汚染問題も議題の一つだ。解決に向けた意見集約を図れるのか、議長国・日本の対応が問われる。