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防風林「先端技術への期待とリスク【2019年9月4週号】」

 ▼顔認証技術の進歩が著しい。昨年、東京・渋谷で起きた軽トラ横転事件では、監視カメラなどの画像を基に4万人の群衆から容疑者を探し、移動に利用した駅も特定した。カメラと画像処理技術の進展、人工知能(AI)による認識率向上が背景にある。
 ▼来年の東京オリンピック・パラリンピックでは、選手や関係者の確認に顔認証システムを利用する。30万人もの関係者が競技会場などを出入りする際の確認作業を省力化するとともに、不審者の侵入を防ぐ。渋滞する空港の出入国管理の合理化も期待され、国内の空港への顔認証ゲートの導入が始まっている。
 ▼畜産など農業分野に応用できる可能性もあるという。牛や豚などの個体識別にこの技術を利用し、個体ごとに餌の食べ方や行動、健康状態を把握する。畜主の負担軽減と個体ごとの適切な管理を両立し、成績向上につなげる。顔だけで識別可能なのかと思ったら体形や模様を含むようだ。
 ▼ただ、技術の進歩で多くのメリットが見込める反面、権力による監視強化や人権侵害の恐れも指摘されている。何しろ顔写真が1枚あれば、どこで何をしたか行動が筒抜けになる。何らかの形で情報が漏れると瞬時に拡散するネット社会のリスクが加わると、標的にされる人のダメージは深刻だ。被害回避と人権を守るルール作りを急ぐ必要がある。