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防風林「新蚕業を支える養蚕農家の育成を急げ【2019年10月1週号】」

 ▼シルクを利用した新たな市場創出と、需要にあった生産体制の構築を目指すとし、農林水産省は「新蚕業プロジェクト方針」を策定した。繊維と繊維以外の用途で、新たなシルク利用の方向性を示し、産業化に向けて政府や関係機関などが実施すべき内容をまとめた。取り組みを推進するため、関係者による協議会の立ち上げも提起した。
 ▼繊維用途では、遺伝子組み換え技術により、緑色や青色などの蛍光糸や、強くて切れにくいクモ糸シルクを作るカイコが開発されている。繊維以外の用途では、シルクタンパクが持つ紫外線吸収や保湿、抗酸化などの機能性を生かし、化粧品や食品、医療用品への活用が期待されているという。
 ▼その一方、良質繭の安定生産が新産業創出に向けた課題に挙げられている。養蚕業の衰退に伴い、経験豊富な生産者が減っているほか、桑収穫機などの機械や養蚕設備は古いものしかなく、生産性は低い。当然、新たな機械などの開発や改良を行う企業もないためだ。
 ▼農林水産省の統計では、2018年の養蚕農家数は全国で293戸、繭の生産量は110トンだ。輸出産業として日本経済を支えた1930年には、220万戸で約40万トンを生産していた。
 ▼養蚕は、土地の気候に合わせた施設環境の管理などカイコの飼養技術に加え、桑園管理も重要だ。新たなシルク蚕業を支える養蚕農家の育成には、知識だけでなく、経験者が培った知恵の継承も欠かせない。さらに養蚕農家が減る前に、担い手育成を進めてもらいたい。