▼このほど閣議決定された2021年版防災白書は、防災・減災、国土強靱化対策の例として農業用水利施設や田んぼダムなどを活用する流域治水対策を紹介する。河川の流域ごとに関係者が連携し、大雨の際には遊水池や貯留施設として機能させ、災害を防ぐ取り組みだ。
▼田んぼダムについては、農研機構が水稲の生育段階ごとに減収しない水深などの条件をまとめており、安価で手軽に設置できる水位管理器具も開発した。農林水産省は、水田の貯留機能を高める農地整備などの支援に加え、水位センサーや自動給排水システムを利用したスマート田んぼダムの実証事業を始めている。
▼田んぼの雨水貯留機能は、以前から洪水の防止・軽減に役立つとされてきた。田んぼダムは、その機能を最大限に引き出す工夫と言える。集落ごとに合意形成し、広い地域での連携ができれば、大雨の際も被害抑制が期待できる。
▼実際には、圃場の準備や降雨時の作業など農業者の負担も伴う。安全確保への十分な配慮も求めておきたい。