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自給飼料+放牧=優良牛生産 水田と遊休農地を活用【5月4週号 山形県】

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 【山形支局】小国町本町地区で繁殖牛78頭、肥育牛30頭を飼養する「株式会社遠藤畜産」では、自給飼料生産による循環型農業の推進と、遊休農地10ヘクタールを活用した放牧飼育に取り組む。また、県が実施する「シマウシ」による吸血昆虫対策の検証に一役買っている。「牛の体調を時間をかけて毎日観察している」と話すのは、同社で取締役を務める遠藤寛壽〈かんじゅ〉さん(36)。2003年に就農し、現在は年間60頭の子牛と肥育牛15頭を出荷する。18年に同社を立ち上げ、寛壽さんが和牛部門全般を担い、代表取締役には父の和彦さんが就いた。生後約9カ月で出荷できる子牛生産は、寛壽さんが考える経営にマッチしており、繁殖牛の規模拡大に力を入れてきた。より健康な牛を育てるため、水田を活用した自給飼料の生産に取り組む。自社所有に加え、地域の農地を借り受けて生産性を高めている。排出物の堆肥化を図り、飼料生産圃場に散布することで、良質な飼料と低コスト化を実現。必要な飼料の約8割を自給する。増頭を進めるには畜舎内だけの飼育では限界があるため、遊休農地での放牧を積極的に取り入れた。「給餌や排せつ処理などの省力化はもちろん、牛の足腰が強くなり、分娩事故が減った」と話す。昨年から県置賜総合支庁産業経済部農業振興課の指導の下、ゼブラ柄塗装による繁殖牛の吸血昆虫対策の検証に携わる。繁殖牛に白い樹脂塗料でしま模様を描くことで、アブやサシバエなどの接近を防ぎ、放牧時のストレス軽減の効果を検証する。「面白い試みに興味が湧いた。明るい話題を提供したいと思い、喜んで引き受けた」と寛壽さん。同課によると、模様ありと模様なしの牛を比較したところ、虫を避けるための足踏みや頭を振る行動が、模様のない牛より4~8割少ないことが確認された。今年は模様が消えないような塗料を選び、長期間放牧で経過を観察するという。寛壽さんは「ここまで効果があるとは思わなかった。今後も協力していきたい」と話す。

〈写真:しま模様に塗られた「シマウシ」〉