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狩猟に奔走・ジビエ消費促進 獣害苦の農家を助けたい【9月1週号 広島県】

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 【広島支局】「千代田ジビエ工房 池田屋」(北広島町)は、シカやイノシシを解体処理し、ジビエ(野生鳥獣肉)として販売する。「シカやイノシシからいただいた命を無駄にしたくない」と話す代表の池田謙一さん(44)は、自身も猟師で、昨年は約200頭を食用に解体・販売。今年は300頭を目指している。池田さんは「獣害に困っている農家を助けたい」と北広島町全域へ足を運ぶ。「わなに掛かったという連絡が入ると仕留めに行く。農家からの『ありがとう』や『助かる』の声にやりがいを感じる」。池田さんが所属する捕獲班の班長・島筒〈しまづつ〉洋二郎さん(43)は、水稲約26ヘクタールや麦、大豆を栽培しながら、狩猟に参加する。「池田さんとは3年の付き合いで、元気で行動力がある人。捕獲後の処理をしてくれて、めちゃくちゃ助かっている。これからも一緒に頑張りたい」と話す。池田さんは「害獣の大小にかかわらず、命を大切にしたい。その命を大切にすることを子どもたちに伝えたい」と、昨年11月から町内の小学校の給食にジビエを提供。ジビエの消費を促進するほか、食育活動にも力を入れる。栄養士と相談し、「鹿肉のキーマカレー」や「猪肉のタコライス」などが給食として振る舞われた。「子どもたちから『シカ肉を初めて食べたけど、おいしかった』というメッセージをもらい、とてもうれしかった。栄養価が高く、ジビエは体に良いもの。これからも提供を続けていきたい」と話す。同工房は2020年7月にオープン。インターネット販売やイベントへの出店でジビエの消費拡大に努めてきた。最近では、鉄分が豊富で貧血予防になることが着目され、産婦人科医院から「病院食に使いたい」という依頼があった。現在、パート従業員はいるが、増える害獣に人手が足りないという池田さん。「販売価格や人手といった課題はあるが、ジビエがもっと普及するよう頑張りたい」と話している。

〈写真:「臭い、硬いといったジビエのイメージを変えたい」と池田さん〉