ヘッドライン一覧 購読申込&お問い合わせ 農業共済新聞とは? 情報提供&ご意見・ご感想 コラム防風林

防風林「ありがたい話の裏で進む農業の衰退【2022年9月3週号】」

 ▼農業の労力不足が深刻化する中、公務員の副業として農作業のアルバイトを解禁する地方自治体が増えている。地方の主要産業である農業を支えるとともに、体験を職務に生かしてもらうねらいもあるという。地方公務員法では、営利目的の副業を禁止しているが、任命権者の許可で認められる仕組みを活用する。
 ▼実家が兼業農家などの場合、公務員でも農業への従事は認められている。しかし、報酬が伴い、営利性が高いと判断されれば処分される例もある。公共の利益のために働く公務員は「全体の奉仕者」であり、営利につながる行為は制限されていた。
 ▼ただ、昨今は営農継続が困難になるほど労力不足は深刻化し、流通など関連産業への影響が懸念される状況もある。地方公務員の職務は地域の創生や活性化であり、解禁を決めた自治体では地域の産業振興という点で公共性が高いとの判断に至ったようだ。
 ▼この秋から農政の基本指針である食料・農業・農村基本法の検証・見直しが予定されている。まずは農業が産業として自立できる政策の構築を求めたい。ありがたい話ではあるが、公務員のアルバイトを当てにする状況では農業・農村の衰退は止められない。全体の底上げに国の責任は重大だ。