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憧れのリンゴ農家に 廃園の窮地を救う【11月2週号 栃木県】

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 【栃木支局】那須烏山市興野の中村麻衣〈なかむら・まい〉さん(39)は、廃園予定だったリンゴ園を継承し、2022年4月に就農した。ナシ50アールとリンゴ70アールを栽培。果実の販売だけではなく、リンゴ狩りなど消費者との交流を大切にしている。北海道出身の中村さんは、就職を機に宇都宮市に移住した。フィットネス講師として17年間働いていたが、中学生の頃からの夢だった果樹園に挑戦しようと就農を決意。果樹産地の那須烏山市を管内とするJAなす南に相談したところ、廃園予定だった「阿相〈あそう〉りんご園」を紹介された。園主だった阿相善一〈ぜんいち〉さん(87)は「リンゴ園を56年間続けてきましたが、高齢となり廃園を決めたので本当につらかったです。中村さんが継いでくれて感謝しています」とほほ笑む。中村さんは「果樹は初期投資が多く、成園化して収量が安定するまで時間がかかるため、新規就農は難しいと感じていました。タイミング良く阿相さんの園地を引き継げたので、とてもうれしいです」と話す。中村さんは農業の経験がなかったため、ナシ農家での研修や阿相さんの指導で栽培技術を1年間学んだ。22年4月に「体験型農園フルーツファーム烏山」をオープン。5月に北海道から移住してきた母の由美子〈ゆみこ〉さん(66)と、ナシは「幸水」「豊水」「あきづき」を、リンゴは「秋映」「シナノスイート」「ふじ」など8品種を販売する。ナシは全量をJAなす南に出荷し、リンゴは直売所や果物狩りで販売。リンゴ狩りには個人客のほか、幼稚園や小学校の子どもたちも訪れるという。「リンゴ狩りには阿相りんご園のお客さまたちが変わらず来てくれて、本当にありがたいです」と笑顔の中村さん。「お客さまと交流することを大切にしています。モモや柿、ブルーベリーにも取り組み、収穫体験を通じて、子どもから年配の方まで楽しめる農園を目指していきたいですね」と意気込む。

〈写真:「リンゴの剪定〈せんてい〉などを阿相さんに手伝っていただいて助かっています」と中村さん〉