▼小学生の頃、親類が住む集落のすぐ近くで土石流災害があった。実家から車で20分ほどの距離であり、親類を訪ねる両親とともに現場を見た。山を背後に沢沿いに家が立ち並んでいた一帯は茶色く泥だらけになり、道路にも大きな石がゴロゴロしていた。26戸の家屋が全半壊し、死傷者も多く出た。自然災害の怖さを実感した体験だ。
▼記録を見ると、沢の上流で山腹崩壊が発生し、途中の砂防施設を破壊しながら流路の堆積物を巻き込んで集落を襲った。始め460立方メートルほどだった土砂は最後は3万立方メートルを超えたとみられる。大雨が原因だが、スキー場開発による樹林の伐採との関連性を指摘する声もあった。
▼先ごろ閣議決定された2022年度森林・林業白書は「気候変動に対応した治山対策」を特集する。治山対策と森林整備が進んで山の表面の浸食は減り、山腹崩壊など山地災害の発生件数は減少したという。しかし、温暖化の影響で短時間強雨の発生頻度は増しており、1カ所当たりの災害規模は増加傾向と報告する。
▼近年の災害の特徴を(1)表層よりもやや深い層からの崩壊の発生(2)流量増による渓流の縦横侵食量の増加(3)線状降水帯の発生などによる山地災害の同時多発化(4)洪水流量の増加による流木災害の激甚化――と分析。今後の対応では、治山施設の長寿命化と機能強化に加え、流域治水の関係者や国土交通省など他省庁との連携強化を進めると記述している。
▼今年は例年に比べ梅雨入りが早いようだ。台風の針路となる海域の海面水温が高く、台風が発達しやすい環境という。気象情報に注意し、早めの避難などを心がけたい。