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防風林「集落だけでは難しいクマとの「すみ分け」【2023年9月3週号】」

 ▼クマによる4~7月の人身被害件数が2010年度以降の同期間では最も多く、出没件数も過去最多ペースで推移しているという。この秋は餌となるブナなど堅果類の不作が見込まれ、環境省などは人身被害が多くなる秋に向けて十分な警戒を呼びかけている。
 ▼近年は集落や市街地に出没するクマが増加。人や車がいても恐れない様子から"新世代クマ"とも呼ばれる。従来は、人の生活圏である里山に侵入するクマは少なかった。ただ、耕作放棄地の増加に伴い森林と里山の境界が不明瞭になるなど環境が変わり、車や人の生活音などに慣れたとされる。
 ▼環境省の『クマ類の出没対応マニュアル』によると、クマの出没を減らす鍵は、出没抑制対策の徹底による「すみ分け」だ。住宅や農地と山林との間に緩衝帯を整備し、餌になる農作物や生ごみなどの撤去や近づいたときの追い払いが対策の基本になる。
 ▼しかし、高齢化や過疎化が進む中、地域住民だけでは対策の実践は困難。個体数の調整や新世代クマの侵入時の駆除を担うハンターも高齢化などで減少の一途をたどる。この秋は、餌の撤去に加え、クマの痕跡に近寄らずクマ鈴やラジオで人の存在を知らせるなど、極力出会わない対策が欠かせない。