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防風林「トキの野生復帰――農家の役割が期待されている【2023年10月4週号】」

 ▼今年は野生復帰を目指してトキの放鳥を始めてから15年、日本産最後のトキである「キン」が死んで20年になるそうだ。昨年の調査で野生の個体数は537羽と推定され、うち386羽は野生下で誕生したと考えられる。本州に渡る個体もいて行動範囲は300キロ程度あるが、生息地は新潟県の佐渡島にとどまる。
 ▼野生復帰は2003年から本格化した。中国から贈呈・供与された7羽を始祖とし、遺伝的多様性を確保しながら繁殖・飼育に取り組んだ。並行して餌場やねぐら、営巣場所となる放鳥後の環境整備を進めてきた。特にあぜや水路を含めた水田は主要な餌場であり、冬場も湛水〈たんすい〉し餌場にしている。
 ▼放鳥に合わせて米の認証制度が始まり、生き物に配慮した独自農法米として農家の手取り確保にも寄与した。13年以降、取り組みは縮小傾向となったが、この数年は農家数が減る中でも面積は若干増加している。
 ▼環境省は、本州での野生復帰を目指し、昨年から五つの地域の自治体と協議会を組織。トキと共生する里地づくりを進める。稲作農家への期待も大きい。