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防風林「品種の特性を生かすのは栽培技術【2023年12月1週号】」

 ▼米育種の研究者に「コシヒカリ」を超える品種を育成する場合、どんな特性が鍵になるだろうと尋ねたことがある。その研究者は少し考えて「今は粘りの強い米が好まれているが、長い時間軸で考えれば消費者の好みも変化して米に求められる特性も変わるだろう」と述べた。ただ、特性を特定するのは難しいとした。20年以上も前の話だが、コシヒカリを超えたといえる品種は今も登場していない。
 ▼今年の記録的な猛暑の影響で、新潟県産コシヒカリの等級が9月末時点で1等は3.6%となり、高温耐性の低さが指摘された。だが、2等まで含めると46.3%になる。新潟県産の高温耐性品種は2等以内が9割というが、1等が15.9%の品種もある。異常といえる高温に加え、渇水もある中で農家が肥培管理を頑張った結果だろう。
 ▼この夏は全国的に高温で推移したけれども、気象経過は地域ごとに異なり、同じ地域でも地形や移植時期の違いで危険な時期に遭う可能性も違ってくる。他県産コシヒカリの1等比率をみても数%から100%までばらつきがある。例え高温耐性品種でも特性頼みだけで十分な力は発揮できない。
 ▼本紙で「農を拓いた先人たち」を連載した西尾敏彦氏は「コシヒカリの奇跡」と題して育成・普及の過程を紹介。食味は良いが倒伏しやすくいもちに弱いため育成中の評価は低かったが、早期栽培向けから普及し、試験場と普及員、さらに農家の努力で各地方に適した栽培技術を作り上げたと結んだ。今後、水稲品種に高温耐性が求められるのは確かだろうが、栽培技術の確立には農家の工夫や努力が欠かせない。