▼今年は第二次大戦終結から80年。終戦の翌1946年6月14日生まれの米国第47代大統領が発動した「相互関税」は、世界の経済や人々の暮らしに大きな混乱・影響を与えている。自由貿易の旗振り役を担い、戦後の世界経済をけん引してきた米国は、自らが主導してきた自由貿易体制から離脱し、ディールと銘打って日本など同盟国を含む世界各国に貿易戦争を仕掛ける国へと変貌した。
▼ただ、グローバル化が進む中、世界一の経済大国といえども国内だけでサプライチェーンを完結するのは不可能。世界的な株価暴落や景気後退懸念も広がる中、米国内だけでなく欧州連合(EU)などでも反トランプのうねりが広がっている。さらに報復関税の連鎖を招けば、国際社会のさらなる混迷・分断につながりかねない。
▼先の大戦を招いた保護主義による経済対立の反省を踏まえ、国際社会は、自由で開かれた貿易体制を目指してきた。あの悲劇を二度と起こしてはならないと、さまざまな難題に対し連携・協力して乗り越えてきた多くの先人たちの努力を無駄にしてはならない。