▼相場の格言の一つに「山高ければ谷深し」がある。日経平均株価が史上最高値を再び更新した。11日には一時4万4200円を突破。欧米主要国の株価が堅調な上、石破茂首相の退任表明による次期政権への期待などが要因とされる。
▼ただ、株高の恩恵に対する庶民の実感は薄い。むしろトランプ関税の影響や戦争・紛争の拡大、気候変動に伴い地球規模で頻発する自然災害など世界経済が直面する多くのリスクを前に、バブル崩壊やリーマン・ショックなど苦い思い出すらよみがえる。ちなみに相場には「上り100日、下げ10日」という格言もある。上昇は時間がかかるが下落は一瞬という意味だ。
▼相場でいえば、米価の先行きも気にかかる。新米価格は軒並み直近20年の最高値となるのは確実な情勢。ただ、政府は2025年産米が平年作なら来年6月末の民間在庫量は直近10年で最大の水準になると見込む。輸入米が増加し、米の消費減退も指摘される中、一部流通関係者の間では現下は"新米バブル"との声も出始めている。
▼相場は「谷深ければ山高し」ともいう。米価は少し前まで長らく谷底だった。ようやく景色が見渡せるようになってきた矢先、再び暗く深い谷に落ちるとなれば、農家の増産意欲は一気にしぼむ。相場格言「天井三日、底百日」では稲作経営は成り立たず、主食の安定供給は一層遠く。