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防風林「ビール業界の混乱に見るネット社会の脆さ【2025年10月3週号】」

 ▼「プシュ」。ようやく涼しくなってきたとはいえ、その1杯で得られる至福のひとときはたまらない。ただ現在、ビール業界には大きな混乱が広がっている。
 ▼発端は、アサヒグループホールディングスへのサイバー攻撃だ。感染させたコンピューター端末のデータを暗号化し、解除のために身代金を要求する「ランサムウエア」と呼ばれる手口で、システム障害が起こり、ビールの供給がストップ。正常化には時間を要するとの見方も強まる中、飲食店などからの受注が急増した他のメーカーも出荷調整や新商品の発売中止を強いられる事態に。一部店頭では品切れ商品も出始めた。
 ▼警察庁によると、2022年以降、ランサムウエアによる被害は毎年200件前後発生。商品の仕入れが長期間停止するなど深刻な被害も相次いでおり、復旧作業に巨額の損失が発生した例もある。
 ▼日本でインターネットの商用利用が始まったのは1993年11月。それから30年余り。世界中のコンピュータをつなぐネットワークは情報収集やコミュニケーションはもとより、企業の経済活動などにも不可欠な社会基盤として普及・浸透し続けている。一方、一つのシステム障害は食の安定供給にも深刻な影響を及ぼす。帰り道、お気に入りの一缶が買えたことにホッとしつつ、便利さの裏にある脆さを思う。