▼久しぶりに実家に帰ると懐かしいイグサの香り。真新しい緑の畳にゴロンと寝転がると、ほどよい柔らかさと肌ざわりが気持ちいい。
▼11月はイグサの苗を水田に植え付ける季節。農家は1年かけて畳表の製織まで行い出荷、畳店などで製品化される。ただ、生活様式の洋風化などに伴う和室の急減で、輸入を含む畳表の総供給量は25年前の2割以下に減少。2000年に1387万枚だった国内生産枚数は103万枚に落ち込んだ。生産農家は200戸割れが迫る。
▼今年8月に主産地・熊本を襲った豪雨の影響も心配される。多くのイグサ農家が被災した。日本の伝統文化を支える産地の復興支援は待ったなし。
▼近年はリビングなどの床の上に置ける「置き畳」など新商品も開発されている。イグサの香りにはリラックス効果や睡眠の質向上作用などがあるとの研究結果も出ている。農家が丁寧に作り上げた畳表の心地よさを久方ぶりに実感し、その価値を次の世代に残したいとの思いを強くする。










