▼世論調査の報道に、思わず目を疑った。台湾有事の賛否を問う項目が含まれていたからだ。台湾有事を巡っては、高市早苗首相が国会で集団的自衛権の行使条件である存立危機事態に「なり得る」と答弁。仮定の話の見解を問うた野党側に答えたものだが、「一つの中国」を掲げ、台湾問題を「核心的利益」とする習近平政権は猛反発し、日本への渡航自粛の呼びかけをはじめ、次々に対抗措置を打ち出してきた。
▼各種イベントが中止・延期となるなど影響は民間交流や経済活動にも波及する中、日本は冷静な対応を徹底し、事態のエスカレーションを防いでいくことが肝要だ。ところが、共同通信社は15日と16日に世論調査(全国電話)を行い、台湾有事での集団自衛権の行使について「どちらかといえば」を合わせ「賛成」が48.8%、「反対」が44.2%だったと報道した。高市内閣の支持率や物価高対策への評価、政治と金の問題への対応などと併せて聞いたもので、大手マスコミなどが相次いで取り上げた。
▼集団的自衛権の行使は、中国との戦争開始を意味する。その影響は、全ての日本国民の生命・財産に直結し、近隣国・地域をはじめ国際社会・経済にも広がる。日々の生活に追われる一般国民に電話で唐突に賛否を問うような事柄ではなく、得られた結果に「解」があるとは思えない。中国当局からの非礼な挑発がSNS(交流サイト)上をにぎわす中、報道機関が火に油を注いでどうする。
▼多くの国民が犠牲になった先の大戦は、メディアのあおりも一因とされている。"チャイナリスク"は、今に始まったことではない。日中は互いに重要な隣国であるはずだ。政治の対立を国民の感情的な対立に発展させてはならない。










