今週のヘッドライン: 2021年02月 3週号
徳島県那賀町の有限会社柚冬庵〈ゆとうあん〉は、同町木頭地区の特産「木頭ゆず」の加工を軸に、女性が活躍する6次産業化企業として地域に活気を生んでいる。木頭ゆずの振興に力を注ぐ中で、古民家を改装したカフェも運営。ランチ営業やワークショップの開催を通じ、町内外の人が集う交流の拠点として定着している。代表の榊野瑞恵さん(60)は「一番の目標は継続。そのためには若い人が必要」と、子育て世代や20代のスタッフを雇用。カフェの充実とともに宿泊部門の新設などの計画も進めており、若い力を取り入れながら地域をさらに盛り上げていきたい考えだ。
農林水産省は11日、千葉県匝瑳市の採卵鶏2農場(約7万9千羽、約27万8千羽)で今季48、49例目となる高病原性鳥インフルエンザの疑似患畜が確認されたと発表した。今季初となった昨年11月以降、3カ月間で殺処分対象羽数は約935万羽(8日現在)に上り、過去最大だった2010~11年の183万羽の5倍を超えている。早期の感染終息を図らなければ鶏卵・鶏肉の需給に甚大な影響も懸念される。全国どこでも発生する可能性があることを意識し、官民挙げた感染防止策の強化・徹底が求められる。
農林水産省は12日、家畜共済で2021年度の肉用牛の評価基準を定めるに当たり、新型コロナウイルス感染症拡大以前の直近の取引価格を基礎とする特例措置を講じると発表した。20年の牛枝肉や肉用牛の取引価格が、コロナ禍の影響で一時的に低下したことを受けた。評価基準は、19年2月から20年1月における平均取引価格を基に設定する。
田植えの準備が始まる時期が近づいてきた。近年多発する自然災害への備えを万全にするため、農業保険への加入は欠かせない。基幹作物である水稲栽培を支えてきた水稲共済は、2022年産から一筆方式が廃止される。自身の経営に適した方式への移行が必要だ。水稲共済について、稲穂ちゃんがNOSAI職員のみのるさんに聞いた。
茨城県桜川市の水田・畑地約160ヘクタールで経営する有限会社イワセアグリセンターは、農研機構など研究グループによる水田輪作の高収益化を図る実証に協力。転作の麦類では、湿害を軽減する「畝立て播種」、タンパク質含量を高める「出穂前追肥」、播〈ま〉き遅れを回避する「早期播種」の3技術を導入し、増収や品質向上につなげている。菱沼英昌代表(81)は「米余りが進み、引き受ける水田も増える中、転作でも品質が高い麦・大豆をとっていくことが必要」と話す。
介護が社会問題となる中、家族の「介護疲れ」などが指摘され、介護者へのケアやサポートが求められている。どのような環境や支援があれば介護を継続できるのか、介護者が一人で悩まないためにはどうしたらよいのか――などについて、介護ライターの浅井郁子さんに聞く。
【富山支局】「米ぬかなどで作ったボカシ肥料を使う資源循環型の農業をベースに、フードロス問題にも取り組んでいる」と話すのは、入善町にある株式会社ライスヒル代表の米原章浩さん(36)。地域資源を生かした商品開発に取り組む団体「6次産業推進会議(通称マンモス6、同町農政課が事務局)」の代表を務める。同社が栽培するミニトマトやサトイモ、株式会社staygoldてらだファームのサツマイモやトウモロコシ、プチヴェール、株式会社丸善醤油(しょうゆ)の甘酒を使った計6種類の「入善町のこだわりおやさいジェラート」を開発した。ジェラートは、形が悪いだけで値が付かない不ぞろい野菜を活用するなど、フードロス減少への取り組みが評価され、「フード・アクション・ニッポンアワード2020」の入賞100産品に選ばれた。
〈写真:「父が農薬を減らした農業に取り組んでおり、化学肥料や農薬を使わないことが普通だと思っていた」と米原さん〉
【島根支局】後世に残していこうと、1999年にワサビ栽培を始めた大田市三瓶町「かじか農園」の景山悟至さん(70)は、妻の美代子さんと従業員2人で1.2ヘクタールで栽培し、年間1万本以上を出荷する。栽培する「三瓶わさび」は、濃厚な風味と強い辛味が特徴の在来種だ。「採種から3年間、毎日のように畑に足を運んでやっと出荷する三瓶わさびは、皆さんに自信を持って薦めることができる」と景山さん。販売する「かじか農園のわさび漬け」は、酢漬け、味噌(みそ)漬け、醤油(しょうゆ)漬けの3種類があり、加工しても風味は損なわれない。2年前には、三瓶わさびを気軽に楽しんでもらいたいと、同市久手町に飲食店「かじか」をオープンした。常連の林正敏さんは「三瓶わさびは後味がすっきりして食べやすい。普段味わえない味が店では気軽に楽しめる。特にわさび茶漬けは絶品」と話す。
〈写真:わさび漬けを手に「皆さんに少しでも知ってもらえればうれしい」と景山さん夫妻〉
【岩手支局】農家や飲食店が売り場に設置するポップ広告や商品ラベルなどを制作する金ケ崎町三ヶ尻の「なつき屋(菊池亜紀代表、41歳)」では、野菜を身近に感じてもらうため、野菜をモチーフにしたぬいぐるみやブローチなども販売。農家と消費者の間に立って、野菜の魅力の発信に力を入れている。農家の繁忙期に作業を手伝いに行く菊池代表。「お手伝いのときに依頼を受けることもある」と話す。昨年は、農家の名刺と農園を紹介するカードの制作を依頼された。「"派手なもの=目立つ"ということではない。人や作物によって、効果的な宣伝方法やデザインは変わる」と話す。
〈写真:「野菜に興味を持ってほしい」と菊池代表〉
【山形支局】東根市神町の斎藤章さん(43)は昨年、果樹仲間5人で期間限定(11~1月)のつぼ焼き芋店「六角屋」をオープンした。"幻のサツマイモ"といわれる「ハロウィンスウィート」を使用。果肉が鮮やかなオレンジ色で、しっとりとした滑らかな食感と上品な甘味が特徴だ。メンバーが所有する畑3アールに定植し、9月に収穫した。店のオープンを会員制交流サイト(SNS)で情報発信すると、市内外から女性を中心に多くの人が訪れ、リピーターになる人もいたほど。栽培したサツマイモは12月末で売り切れてしまったため、その後は「べにはるか」や「シルクスイート」などを仕入れて営業を続けた。吉田さんは「今年は栽培面積を増やし、多くの人に焼き芋を味わってもらいたい」と話す。
〈写真:仕込み中の焼き芋〉
▼穀物の先物市場価格が高騰している。米国農務省の月例報告によると、小麦やトウモロコシなどのシカゴ相場が高騰した2012/13年の相場並みか近い水準にある。ただ、生産量が消費量を若干下回る予測ではあるが、期末在庫率は29.3%と、前回高騰時の21.1%を上回っている。
▼降雨などの影響で減産する国がある一方、小麦、トウモロコシとも生産量は過去最高となる見通し。大豆も前年度を上回るとの予測だ。相場上昇の要因は、急増する中国の飼料用需要に加え、投機的資金の流入が指摘されている。
▼株式市場も、日経平均株価が2万9千円台を回復してバブル崩壊後の高値を更新したという。コロナ禍の関連倒産が千件を超えるなど企業の経営環境は厳しい中で、米国の追加経済対策や日本の金融緩和政策への期待感が投資を促している。
▼国連食糧農業機関(FAO)など四つの国連機関は先ごろ、コロナ禍による昨年来の経済の動きがアジア・太平洋地域での栄養不良の拡大を招くと警告を発している。コロナ禍が食料価格の上昇と可処分所得の減少を招き、食料安全保障を脅かしているとした。投機が市場をゆがめないよう何らかの手だてはないものか。