今週のヘッドライン: 2025年06月 4週号
農林水産省は16日、2025年産から水稲の作況指数の公表を廃止すると発表した。平年収量と比較し、収量の出来不出来を見る指標だが、小泉進次郎農相は、近年の気候変動などを受け、生産現場の実態と合わなくなっていると指摘。「最新技術も活用しながら統計の精度向上を図り、農政の新たな基盤を確立していきたい」と述べた。
大阪・関西万博のテーマウィーク「食と暮らしの未来」に合わせて、農林水産省が会場内にブース「RELAY THE FOOD~未来につなぐ食と風土~」を出展(6月7日~15日)。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録された日本の「伝統的酒造り」など伝統的な食と農を世界にアピールした。「伝統」「多様性」「未来」をキーワードに国連食糧農業機関(FAO)の世界農業遺産に登録されている「にし阿波の傾斜地農耕システム」やスマート農業技術なども紹介。関連する会場を含め9日間で約10万6000人が来場し、にぎわいを見せた。
自民党は18日、畜産・酪農対策委員会を開き、牛乳・乳製品の需要拡大に向けた論点整理を行った。製品価格上昇の影響を含む消費低迷により、脱脂粉乳の年度末在庫量の大幅拡大が予測される中、国産牛乳・乳製品の消費拡大へ、数値目標を設定した上での酪農・乳業一体となった取り組みの拡充を提起。輸出・インバウンド(訪日外国人)需要拡大への業界の体制充実などの重要性も示した。持続可能な酪農の実現には、生産コストを適正に反映した価格形成とともに、牛乳・乳製品の需要拡大を通じて酪農家の所得向上が見通せる環境整備が急務だ。
NOSAI獣医師は、家畜共済での保険診療や事故低減対策に加え、家畜防疫・家畜衛生など地域の畜産振興に大きな役割を果たしている。さらに近年は、産業動物臨床や農場管理の知見を生かして畜産経営の生産性・収益性向上を図る「生産獣医療」の提供など新たな取り組みも進めている。各地のNOSAIでは、獣医療体制の充実・強化へ獣医学系大学の学生実習の受け入れなど就業を後押しするとともに、働きやすい職場環境づくりなどに力を注ぐ。
国が定める指定野菜の一つでもあるニンジンは、和洋さまざまな料理に使われ、日々の食卓を彩る緑黄色野菜の代表的存在だ。本紙4週号営農技術・資材面で「注目の種苗」を執筆する株式会社ヒューマンコミュニケーションズ代表取締役の阿比留みど里さんに、直売所などで目玉商品にもなりうる注目の品種を紹介してもらう。
空き家の増加が問題となる昨今、我が家の将来について悩んでいる人も多いのではないだろうか。「日常キロク製作所」では、家族で話すきっかけづくりとして、家の間取り図などに日常の写真や大切な思い出、エピソードをまとめる「お守りBOOK」を提案している。代表の鈴木さとみさんに作成のポイントなどを教えてもらう。
【静岡支局】「『AOIプロジェクト』を通して、さまざまな人や技術に出合い、高品質で高機能なトマト栽培を実現した」と話すのは、三島市のSATO FARM(サトウファーム)代表・佐藤光(ひかる)さん(34)。JAふじ伊豆のブランドトマトで、機能性表示食品を取得している「ミシマガチトマト」のほか、中玉トマトやカラフルトマトなどのトマト約19アールを栽培する。
〈写真:トマトの生育状況を確認する佐藤さん〉
【熊本支局】「軟らかい圃場でも足を取られることがなくなり、播種作業が楽になりました」と話すのは、南阿蘇村の岩下一誠(いわしたいっせい)さん(39)=水稲250アール、観光イチゴ農園20アール、ミニトマト10アール、ソバ20アール。トラクター用のリアバケットを改造した播種作業台を自作し、作業の効率化を図っている。
〈写真:「好きな物作りを営農に生かしています」と改造した播種作業台と岩下さん〉
【兵庫支局】「これまでに培った経験を生かし、最新人工知能(AI)を使いこなすスーパーじいちゃんとして、優良種子の生産に取り組みたい」と話すのは、たつの市神岡町の「神岡種子生産組合」組合長を務める林敏一(はやしとしかず)さん(70)。
同組合は「沢田営農株式会社」を母体とし、30年以上にわたり、小麦と大豆の種子を生産する。特に小麦は、地域の生産者のために、優良な種子を生産する役割を一手に担う。
〈写真:麦の生育状況を確認する林さん。手にするスマートフォンで衛星画像が確認できる〉
【愛知支局】一宮市の井本明(いもとあきら)さん(58)は、ビニールハウス約34アールを活用し、サンショウを栽培している。
農業を始めたのは約30年前。同級生からの声かけがきっかけだった。その同級生の親戚がサンショウの芽を扱っており、栽培に関心を持ったという。現在は夫婦でサンショウ作りに取り組む。
出荷は本来、春と秋が中心だが、冷蔵保存した苗を活用することで、年間を通じた市場出荷を可能にしている。
〈写真:サンショウを手で確かめる井本さん〉
▼農林水産省が、稲作農家に対する米の生産意向調査を実施中だ。全ての販売農家・農業法人などを対象に、同省ホームページ上の専用フォームで来年、5年後、10年後の生産についてそれぞれ増産か、現状維持か、縮小かなどを聞いている。
▼さらに増産の理由やその実現に向けた課題・要望、さらには生産コストの把握状況なども調査。実施期間は来月(7月)31日までで、開始に当たって小泉進次郎農相は、生産現場の実態把握の重要性を強調し、多くの生産者に調査への協力を呼びかけた。
▼結果は、2027年度からの水田政策の見直しを含む米政策のあり方の検討材料にするとの説明だ。昨夏からの"令和の米騒動"は、国民の最大の関心事となっている。ただ、消費者の要望を踏まえた早期値下げが政府目標となり、日本の稲作の危機への十分な理解につながっているとは言い難い。
▼備蓄米の大量放出を受け、米価下落の兆しが強まる中、石破政権には価格が落ち着いたその先に、稲作農家が安心して経営継続できる道筋を示せるかが、問われている。よもや今回の調査実施を参院選前のアリバイづくりにするつもりはないだろうが、再び米騒動が起きないためにもあえて言う。今度こそ農家の思いに応える米政策を実現してほしい。