今週のヘッドライン: 2025年09月 1週号
有機農業に地域ぐるみで取り組む「オーガニックビレッジ」を宣言する宮崎県綾町では、町内の有機農家らによる合同会社が運営を担う綾オーガニックスクールが中心となり、有機農業の担い手育成に力を注いでいる。2年間の研修で、栽培技術や経営を体系的に指導。現在、2~3期生の5人が町内での就農を目指して学んでいる。農地確保や販売面もサポートし、今年5月には1期生が独立した。毎年3人の研修生を受け入れ、仲間を増やしながら、産地を盛り上げていきたい考えだ。
農林水産省は8月29日、2026年度農林水産関係予算概算要求を財務省に提出した。総額は25年度当初予算比17.1%増の2兆6588億円。「米の需要に応じた増産実現予算」と位置付け、新たな食料・農業・農村基本計画や現下の米情勢を踏まえ、農林水産業の持続可能な成長実現へ生産者自らの判断による需要に応じた生産の後押しなどに重点配分した。特に農地集積・集約化やスマート農業技術の導入、農地の大区画化などによる米の生産コスト削減など生産性向上を図るとともに、新たな環境直接支払交付金の制度創設などを明記。収入保険制度の実施は67億円増の466億円を盛り込んだ。
NOSAI協会(全国農業共済協会)の髙橋博会長は8月27日、2026年度農業関係予算案を審議した自民党農林関係合同会議に出席。収入保険と農業共済の円滑な事業運営に必要な関係予算の確保を要請した。
髙橋会長は、自然災害により各地で甚大な農業被害が発生する中、NOSAI団体は「早期の損害評価や共済金支払い、つなぎ融資の実行などに全力で取り組んでいる」と強調。将来にわたって収入保険と農業共済の両事業が役割を果たすことができる必要な予算の確保などを強く訴えた。
小泉進次郎農相はこのほど、収入保険の加入者数が制度開始からの目標である10万経営体を超えたと発表。自然災害を中心にリスクは顕在化しているとし、あらゆるリスクに対応し個々の経営ごとに収入減少を補てんする収入保険への加入の重要性を強調した。収入保険の加入・支払い状況や自動継続特約の利点などについて稲穂ちゃんがNOSAI職員のみのるさんに聞いた。
国際農業者交流協会は、東京都港区で「畜産ティーン育成プロジェクト」の成果報告会を開催。畜産業を支える次世代の人材を確保するため、若者の畜産業に対する意識改革と就農への動機付けをPRする活動で、当日は、オーストラリアでの現地研修を終えて帰国した高校生21人(21校)が参加。4グループに分かれ、それぞれの思いを語り、自分たちの目指す畜産業の未来などを提案した。
岩手県紫波町の農事組合法人水分農産(水稲40ヘクタール、野菜15ヘクタールなど)では、県農業研究センターが開発した新タマネギの初冬どり作型に30アールで取り組む。苗の代わりに、小さな球(セット球)をハウスで育てて保管し、夏に定植する。端境期の11~12月も含め直売でき、単価は加工用タマネギに比べ5~6倍と高い。野菜作が少なくなる冬に、出荷・販売などの作業確保や収入源にも生かす。
【福井支局】坂井市三国町池上の株式会社浅藤(あさふじ)牧場 牛乃道(うしのどう)は「ホルスタイン」種のほか、全国でも希少な「ガンジー」種を飼育している。浅藤一生代表取締役(45)は、6次産業化にも積極的に取り組み、ソフトクリームの販売や業務用のソフトクリームミックスの製造・販売など事業の幅を着々と広げている。
〈写真:浅藤代表とみち。現在、妊娠鑑定で陽性が確認されており、無事生まれれば4月中旬から搾乳が可能〉
【岡山支局】真庭市大庭地域で水稲や黒大豆、白ネギなど合わせて約8ヘクタールを栽培する神尾健一(じんおけんいち)さん(57)。近隣地域で離農者が増える中「地域農家の米を全て受け入れる地元のライスセンターが必要」という思いから、2024年3月にライスセンターを新設した。
〈写真:「いずれは若い人たちが協力して地域を守ってほしい。自分はその下地をつくるつもり」と神尾さん〉
【山形支局】飯豊町小白川の「合同会社髙橋ファーム」の髙橋啓(さとし)代表(41)は、2023年に動画共有サイト「YouTube」にチャンネル「髙橋ファームの日常」を開設。日々の農作業風景、子牛や枝肉市場の競りの様子などを配信し「農業」のリアルを伝えつつ、自社産の米や牛肉の販路拡大に取り組む。
〈写真:動画撮影の様子。中学生の「職場体験」を撮影〉
▼ハンバーガー入りの袋が大量に放置されている映像に、胸が痛くなった。日本マクドナルドの玩具付きメニュー「ハッピーセット」を巡る問題。今回は期間限定配布の「ポケモンカード」を求めて客が殺到。店内や周辺道路などが大混乱に陥った上、転売目的での大量購入が相次ぎ、食品の大量廃棄が発生した。
▼誰でもネットで転売できる環境下で、一部高額取引されるキャラクター商品は、いわゆる"転売ヤー"の格好の的。同社は今年5月にも同様の問題を起こしており、事態を重くみた消費者庁は販売方法の改善を要望した。過去の経験をおざなりにして、子どもたちを悲しませ、食品ロスを大量に発生させ、自社の価値を失墜させる。いったい誰をハッピーにしたいのか。
▼転売ヤーが世間をにぎわす問題の対策には消費者の行動も重要だ。特に世界の飢餓人口は約7億人、実に世界全体の11人に1人が飢えに直面している。食料の6割を海外に頼る国の民が、自らの儲(もう)けのために食べ物を粗末にする輩(やから)を助長させてはならない。