今週のヘッドライン: 2025年10月 1週号
佐賀市の株式会社イケマコ(水稲など37.5ヘクタール)は、主食用米の生産コスト低減に向けた実証事業に参画し、直播栽培やロボット農機などの活用に取り組む。「経営の選択肢を広げ、地域の水田を将来に残したい」と池田大志代表(49)。主食用米60キロ当たり生産コスト9544円(慣行比14%減)を目標に、輸出拡大にも対応した生産体系の構築を図る。
農林水産省は9月22日、食育推進評価専門委員会を開き、2026年度から30年度を期間とする第5次食育推進基本計画の重点事項の方向性案や目標設定の在り方などを議論した。重点事項では学校などでの食や農に関する学びの充実に加え「大人の食育」の推進を柱に掲げた。国民の食卓と生産現場の距離を縮める取り組みも拡大する。食育の目的である健全な食生活の実践には、必要な食料の安定供給を支える国内生産基盤の維持・強化が欠かせない。国内外の情勢変化に伴う食や農を取り巻く厳しい現状を共有し、消費者の行動変容につながる国民的な食育運動の展開が求められる。
農林水産省は9月19日、2024年産主食用米の8月の相対取引価格(全銘柄平均、速報)は前年同月比261円(1%)高の玄米60キロ当たり2万7179円と発表。年産平均価格は9510円(62%)高の2万4825円で、出荷業者と卸売業者などの間の取引価格としては、比較可能な1990年以降で最高となった。
栃木県栃木市大平町の椎名博さん(60)は、ニラ40アール(ハウス16棟)を家族3人で栽培。JAしもつけのブランド「大平の元気にら」として周年出荷している。先月まで同JAニラ部会の部会長を務め、部会全体の栽培技術向上や産地振興にも積極的だ。気候変動による高温や局地的な豪雨、台風の増加など高まるリスクに対応するため収入保険に加入。さらに園芸施設共済にも加入して備えを万全にし、安定経営に努めている。
山形県舟形町で「さわのはな」など水稲3ヘクタールを栽培する矢野雄彦さん(47)は、都市部の消費者をはじめ、家族連れや企業の従業員の研修などとして、田植えや稲刈りなど農業・農村体験を受け入れている。圃場は「無農薬・無肥料栽培」「慣行栽培」に分けるなどして作り方の違いも紹介。実際の現場にふれてもらうことで食や農、自然環境を考えるきっかけづくりに力を注いでいる。
冬に向け園芸施設では加温の機会が増える。気象庁によると今年12月の東・西日本の平均気温は、平年並みか低い見込み。生産資材が高騰・高止まりする中、暖房機の効果的な利用など燃油使用量の削減・抑制は経営安定に特に重要で、温室効果ガスの排出削減にもつながる。農林水産省が作成・公表している「施設園芸省エネルギー生産管理マニュアル」から燃油暖房機の加温開始前に確認したい省エネ効果を高めるポイントをまとめた。
【秋田支局】八峰町の元地域おこし協力隊の3人が今年2月、合同会社やっほーfarm(ファーム)を設立し、同町峰浜水沢の果樹園を引き継ぎ、ナシ59アールの栽培に取り組む。さらに、空き店舗を活用した直売所を開店予定で、地域からの期待も大きい。
ナシを主体に栽培する「笠原果樹園」を継承したのは、川崎市出身の越前谷淳さん(38)と、能代市出身の山田勝さん(36)、菜々子さん(37)夫妻。3人とも神奈川県から移住し、協力隊在任中に農業に関わった経験から就農を志望した。ナシ栽培を志した勝さんが園主に就任。園地で直売する他、県内外へ贈答用のナシを届けている。
〈写真:ナシ「幸水」の収穫作業に精を出す3人。右から越前谷さん、勝さん、菜々子さん〉
【山梨支局】甲斐市敷島の「御領棚田」では、NPO法人敷島棚田等農耕文化保存協会(山本賢治会長、81歳)が5月に田植えをした水稲「コシヒカリ」が収穫期を迎えている。
御領棚田は徳川家康から「御朱印」を賜ったことから、そう呼ばれている。1950年ごろには、大小さまざまな水田が千枚以上あったが、農家の高齢化や後継者不足で300枚程度にまで減少。保存協会が棚田の再生と保全に取り組む。
田植えを終えた6月にはイルミネーションイベントを行う。ペットボトルに発光ダイオード(LED)が入った「ペットボタル」2150個を水田に設置。甲府盆地の夜景と共に幻想的な景色を楽しめ、毎年多くの来観者が訪れる。
〈写真:ルミネーションは田植えの1週間後から8日間。日没から約4時間点灯する〉
【山形支局】「自衛隊での仕事もやりがいがあったが、農業は自分が作ったものを『おいしい』と喜んでもらえるところに魅力を感じる」と話すのは、河北町谷地辛の角川勇治(つのかわゆうじ)さん(29)。今年3月に10年間勤めた自衛隊を辞め、地元で就農の道を選んだ。
〈写真:「自衛隊で培った体力と忍耐力で頑張っていきたい」と話す角川さん〉
▼日本人の食卓に欠かせない大豆加工食品といえば「豆腐」「納豆」「味噌(みそ)」「醤油(しょうゆ)」。ちなみに語呂合わせから10月2日は"豆腐の日"で、7月10日は"納豆の日"。また30日は「みそか」とも読むことから、毎月30日は"味噌の日"だ。
▼では"醤油の日"はいつか。答えはきょう、10月1日。10月が新しい諸味(もろみ)を仕込む時期だったこと、さらに干支(えと)の10番目「酉(とり)」の字は、醸造物を仕込む容器「かめ」の象形文字で「醤」の字にも用いられていることから、日本醤油協会が2002年に制定した
▼醤油が全国に普及したのは江戸時代で、JAS規格では関東が主流の「こいくち」、関西の「うすくち」、東海3県が主産地の「たまり」、生揚げ醤油で仕込む「さいしこみ」、愛知県碧南市が産地で小麦を主原料とする「しろ」の5種類に分類。使い分け次第で料理の味や色を調整できるのも特徴で、地域の風土や食文化に根付いた商品も多い
▼日本の万能調味料は海外でも人気で、輸出は増加傾向にある。一方、国内の1人当たり年間消費量は20年余りで約4割減少。近年は伝統ある蔵元の廃業も相次いでいるそうだ。食欲の秋。たまには名脇役にスポットをあて新たな銘柄に挑戦してみるのも悪くない。