今週のヘッドライン: 2025年10月 3週号
特定外来生物に指定されている難防除雑草「ナガエツルノゲイトウ」の分布が拡大している。2025年5月までに東北以南の29都府県で確認され、うち14府県(24年)で水田に侵入していた。まん延すると水利施設の詰まりなど通水阻害、水田では水稲の減収を引き起こすため農林水産省では対策の実施を呼びかけている。ただし、茎片からも発根するなど繁殖・再生力が強く、稲刈り後も出芽するため適切な対応が不可欠。非選択性除草剤と秋耕起の組み合わせによる水稲収穫後からできる対策のポイントなどを取材した。
農林水産省は10日、2024年度の食料自給率を発表した。カロリー(供給熱量)ベースの自給率は4年連続で38%となった。主食用米の消費量増加などがプラスに寄与する一方、小麦や大豆の生産量減少がマイナス要因となった。生産額ベースは3ポイント増の64%で、特に米など国内価格上昇が寄与。農業の構造転換へ集中対策の実施を掲げた新たな食料・農業・農村基本計画では、30年度にカロリーベースは45%、生産額ベースは69%に引き上げる目標を明記した。世界の食料生産・供給リスクが高まる中、食料安全保障の確保を掲げた改正食料・農業・農村基本法のもと、自給率向上へ実効性ある対策が求められる。
農林水産省は10日、2025年産主食用米の全国の10アール当たり予想収量(9月25日現在)は前年産比5キロ増の524キロで「作況単収指数」は102と発表した。総じて好天に恵まれた。作付面積は10万8千ヘクタール増の136万7千ヘクタールで、予想収穫量は生産者使用の振るい目幅ベース(1.85ミリベース等)で63万4千トン増の715万3千トンとなった。前回見込み(8月15現在、1.7ミリベース)との比較では、約12万7千トンの上方修正で、17年以降では最高を更新する見通し。
収入保険の2026年1月加入に向け、全国のNOSAIでは農家への丁寧な制度説明に基づく加入推進に取り組んでいる。収入保険は、価格低下や自然災害など経営努力では避けられない収入減少を広く補償する制度で、1月加入には年末までの加入申請が必要だ。補てん方式は保険方式と積立方式を併用する仕組みを基本とするが、農家の個々の経営状況に応じて補償の下限設定や保険方式のみの選択も可能となっている。稲穂ちゃんがみのるさんに確認した。

広島県神石高原町の新内俊彦さん(27)は、祖父が大切にしてきた特産品の〝和玉〟こんにゃくを再び盛り上げようと、父・秋彦さんが代表を務める株式会社新内農園の一員として奔走中だ。在来種「和玉」の生産から加工、販売に汗を流すとともにSNS(交流サイト)を活用して和玉の魅力などを積極的に発信する。SNSでの交流をヒントに新商品の開発に着手するなど新たな取り組みに力を注ぐ。「じいちゃんの宝を残しながら、アップデートしていきたい」と話している。
日本最大規模の農業・畜産の展示会「農業WEEK」が1~3日、幕張メッセ(千葉市)で開催された。草刈り作業の省力化・効率化につながる製品を、農業機械ジャーナリストの山岡玲さんに紹介してもらった。

【埼玉支局】小川町の桜井明弘さん(54)は、ハウス20アールと露地1.85ヘクタールで、切り花のクジャクソウとシャクヤクを中心に、ハナモモやキキョウなど約10品目を栽培している。市場の動向を踏まえた販売戦略に加え、独自に育種して新商品を生み出し、生産品の価格向上に取り組む。
〈写真:クジャクソウを選別する桜井さん〉

【福井支局】「収穫作業が一番楽しい。全ての苦労が報われます」と話すのは、坂井市春江町安沢にある有限会社アグリ・エス・ケーの牧野泰久代表取締役(45)。水稲を主軸に大麦や大豆、ソバのほか、ハウスでトマトなどを栽培し、経営面積は150ヘクタールに上る。
2024年3月に妻の典代さん(46)の父から事業を受け継ぎ、夫婦で共同代表を務める。作業に当たるのは牧野さん夫妻を含め11人。経営にはスマート農業を積極的に取り入れ、生産性の向上に注力している。
〈写真:たわわに実った水田で牧野さん夫妻〉

【宮城支局】南三陸町入谷地区で「ナガノパープル」「シャインマスカット」「クイーンニーナ」「藤稔」など大粒ブドウ8種類を13アールで栽培する阿部博之さん(67)。2023年11月に「大粒ぶどう協議会(会員14人)」を立ち上げ、24年から地域ブランド「しおかぜ葡萄」として販売している。
しおかぜ葡萄と名乗るには、剪定〈せんてい〉枝をバイオ炭として利用するほか、カキやホタテの殻などの海産未利用資源を土壌改良材として施用することなどが必須だ。「環境に優しいことと、果樹に不可欠なカルシウムを南三陸町らしく海から得ることが付加価値になれば」と阿部さん。
〈写真:「リンゴと違って脚立不要で、目の高さでできる作業は楽」と阿部さん〉
▼「プシュ」。ようやく涼しくなってきたとはいえ、その1杯で得られる至福のひとときはたまらない。ただ現在、ビール業界には大きな混乱が広がっている。
▼発端は、アサヒグループホールディングスへのサイバー攻撃だ。感染させたコンピューター端末のデータを暗号化し、解除のために身代金を要求する「ランサムウエア」と呼ばれる手口で、システム障害が起こり、ビールの供給がストップ。正常化には時間を要するとの見方も強まる中、飲食店などからの受注が急増した他のメーカーも出荷調整や新商品の発売中止を強いられる事態に。一部店頭では品切れ商品も出始めた。
▼警察庁によると、2022年以降、ランサムウエアによる被害は毎年200件前後発生。商品の仕入れが長期間停止するなど深刻な被害も相次いでおり、復旧作業に巨額の損失が発生した例もある。
▼日本でインターネットの商用利用が始まったのは1993年11月。それから30年余り。世界中のコンピュータをつなぐネットワークは情報収集やコミュニケーションはもとより、企業の経済活動などにも不可欠な社会基盤として普及・浸透し続けている。一方、一つのシステム障害は食の安定供給にも深刻な影響を及ぼす。帰り道、お気に入りの一缶が買えたことにホッとしつつ、便利さの裏にある脆さを思う。