今週のヘッドライン: 2025年11月 2週号

米の多収技術「再生二期作」が注目されている。稲刈り後のひこばえを利用して栽培し、1回の田植えで年2回収穫を実現する。開発した農研機構は10月に浜松市で現地検討会を開催。主食用米品種「にじのきらめき」で10アール当たり収量計960キロを目指す株式会社じゅんちゃんファームの取り組みが紹介された。温暖化で生育期間が長くなっている開発地の九州に加え、東海や関東などでも導入が始まっている。
クマによる人身被害の多発を受け、政府は10月30日、関係閣僚会議を開催。11月中旬までに「施策パッケージ」を取りまとめる方針を示した。環境省によると、2025年度上半期(4~9月)のクマの都府県の出没件数は2万792件となり、同期間としては過去最多を更新。人身被害は108人に上り、これまでに過去最多となる13人が亡くなった。出没地域では自治体の情報に注意するとともに、単独行動を避け誘引物の除去や緩衝帯の設置など命を守る行動の徹底が必要だ。農村地域の暮らしと営農の安全確保へ対策の抜本強化が急務となっている。
JA全農は10月31日、11月から来年5月に適用する2025肥料年度春肥の価格を公表した。複合肥料の高度化成(基準、15―15―15)は前期(秋肥)に比べ4.3%値上げした。リン安など海外原料の上昇などを反映した。
自家産農産物を生かした加工品の開発・販売などの6次産業化は、さらなる経営安定や付加価値向上などにつながる取り組みの一つ。商品開発や6次産業化プロデュース・コーディネートなどに携わるノライエ株式会社の牧野悦子代表に、先進事例を基にこれから挑戦する農家向けに基本的なポイントをアドバイスしてもらった。
今年12月2日から、医療機関を受診する際や薬局の受付で「マイナ保険証」(または「資格確認書」)の提出が必要となる。マイナ保険証とは、マイナンバーカードに健康保険証の機能を追加したもの。政府は患者の同意があった場合に過去の投薬情報や診察結果などを医師と共有でき、医療の質向上につながるとする。ただ、同日から従来の保険証は使えなくなることから、注意が必要だ。政府公表資料から、マイナ保険証の利用方法などを整理した。
東海農政局はこのほど、環境にやさしい栽培技術の普及・改良に向け、「光を利用した病害虫防除」をテーマにした事例報告会を開催した。紫外線照射によりイチゴのうどんこ病の発生抑制に取り組む2事例の発表内容から概要を紹介する。

【大阪支局】高槻市で「末延農園HARA」を営む末延冬樹さん(39)は、世界で一番辛いとされているトウガラシ「キャロライナ・リーパー」を年間約800キロ収穫し、一味唐辛子などの製造・販売に取り組む。2025年から一味唐辛子をふるさと納税の返礼品として出品し「さっそく反響があり売り上げ拡大につながっている」と話す。
〈写真:「原地区はイノシシやシカの被害が多いので、獣害対策にトウガラシを使用できないか模索している」と話す末延さん〉

【福島支局】「遊休農地を減らし地域の農村環境を守りたい」と話すのは、田村市船引町で「松や農園」を営む佐藤松美さん(61)・富美子さん(57)夫妻。加工時に出るサツマイモの切れ端などを活用し、甘酒に加工、食品ロス削減に取り組んでいる。
〈写真〉サツマイモの生育を確認する佐藤さん夫妻〉

【島根支局】松江市八雲町を拠点に鳥獣害対策とジビエ(野生鳥獣肉)活用などに取り組む「合同会社弐百円」では、猟期以外に捕獲されたイノシシを加工した「八雲いのししジャーキー」を販売し、好評を得ている。
代表社員の森脇香奈江さんは「捕獲した命を無駄にせず、商品として生かすことで、鳥獣害対策について考えるきっかけにしたい」と話す。
〈写真:「イノシシ肉には鉄分が多く含まれているため健康にも良い食品」とジャーキーを手に森脇さん〉
▼久しぶりに実家に帰ると懐かしいイグサの香り。真新しい緑の畳にゴロンと寝転がると、ほどよい柔らかさと肌ざわりが気持ちいい。
▼11月はイグサの苗を水田に植え付ける季節。農家は1年かけて畳表の製織まで行い出荷、畳店などで製品化される。ただ、生活様式の洋風化などに伴う和室の急減で、輸入を含む畳表の総供給量は25年前の2割以下に減少。2000年に1387万枚だった国内生産枚数は103万枚に落ち込んだ。生産農家は200戸割れが迫る。
▼今年8月に主産地・熊本を襲った豪雨の影響も心配される。多くのイグサ農家が被災した。日本の伝統文化を支える産地の復興支援は待ったなし。
▼近年はリビングなどの床の上に置ける「置き畳」など新商品も開発されている。イグサの香りにはリラックス効果や睡眠の質向上作用などがあるとの研究結果も出ている。農家が丁寧に作り上げた畳表の心地よさを久方ぶりに実感し、その価値を次の世代に残したいとの思いを強くする。