今週のヘッドライン: 2025年05月 3週号
今冬の記録的な大雪は、農業にも大きな被害をもたらした。特に福島県では、農業用ハウスなど2900棟超に被害が発生。被災地域では今も爪痕が生々しく残る中、復旧・復興に向けた取り組みが始まっている。経営継続に力を注ぐ昭和村と会津若松市の被災農家に、現在の状況や再建に向けた思いなどを聞いた。
石破茂首相は13日、訪日した世界貿易機関(WTO)のオコンジョイウェアラ事務局長と会談し、WTOを中核とする多角的貿易体制の重要性を強調。トランプ米政権による関税措置に伴い自由貿易体制が揺らぐ中、WTOの求心力を取り戻す必要性を確認した。一方的に高関税を発動した米国は、8日に英国と関税交渉に合意したと発表。中国との交渉では高関税分の引き下げを決めるなど、各国と積極的な交渉を展開している。今後、本格化する日米協議では、各国との交渉状況などもにらみながら、厳しい要求を突き付けてくる可能性もある。政府には毅然(きぜん)とした対応の徹底が求められる。
合理的な費用を考慮した価格形成の仕組みを整備する食品等流通法などの改正案は15日、衆院本会議で賛成多数で可決され、参院に送付された。売り手と買い手双方に費用などを考慮する「努力義務」を規定。国はコスト指標作成団体を認定して指定品目のコスト指標を公表するとともに、努力義務に対応する「行動規範」(判断基準)を省令で示し、取り組みが不十分な場合は必要な指導・助言、勧告・公表を行う。
この冬の大雪では、各地で農業用ハウスや果樹などに大きな被害が確認されている。特に2月4日から、北日本から西日本にかけて広い範囲を襲った記録的な大雪では、9日までの総降雪量が150センチを超える地域が発生。福島県では、会津地方を中心に農業用ハウスなどの損傷が2900棟を超えるなど甚大な被害となった。福島県を含め、被災地域のNOSAIでは、共済金の早期支払いや収入保険のつなぎ融資の周知など被災農家の経営再建・維持を全力でサポートしている。(1面に関連)
生の葉野菜とフルーツ、水などをミキサーにかけて作るドリンク「グリーンスムージー」。自宅で手軽に作れて、野菜や果物の豊富な栄養を効率よく摂取できるなど人気を集めている。魅力と楽しみ方を「野菜と豆腐の料理家」として活動する江戸野陽子さんに聞く。
農林水産省は、農薬の使用機会が増える6月1日から「農薬危害防止運動」を実施する。2025年度のテーマは「守ろう 農薬ラベル、確かめよう 周囲の状況」で、関係者や都道府県、関係団体などと連携し、農薬ラベルの表示事項の順守や周辺環境への飛散防止の徹底などを呼びかける。
【山形支局】飯豊町椿の株式会社林七(りんしち)で代表取締役を務める鈴木寛幸さん(64)は、県から「山形つや姫マイスター」を委嘱されるほか、県が主催する食味コンクールで2023年から2年連続で最優秀賞(県知事賞)を受賞するなど、県ブランド米の品質向上に貢献。県が定める栽培マニュアルに基づき、おいしさと安定した収量を目指している。
【石川支局】「水鳥が集まる柴山潟の環境を守り、人の環境にも優しい循環型の農業を目指していきたい」と話すのは、加賀市柴山町のかが有機農法研究会の田中友晴(たなかともはる)代表(50)。同会では会員の農家10戸が、化学農薬や化学肥料を使用しない米作りに取り組んでいる。
〈写真:「食味には自信がある」と話す田中代表〉
【鳥取支局】「早生・多収・高品質」なイチゴ新品種として期待が集まる「堅(けん)しろう」の普及に向けて、鳥取県園芸試験場では出願公表後の2024年7月に希望するイチゴ農家へ苗の供給を開始した。想定を上回る希望があったため現在は供給を停止していて、今後、数年かけて苗の安定供給体制を整えていくとしている。
〈写真:「堅しろう」(提供:鳥取県園芸試験場)〉
【福島支局】柿1ヘクタールや野菜20アールを栽培する伊達市梁川町の國分喜行(こくぶんよしゆき)さん(52)は、所有する石蔵で毎月第1、第3日曜日に「蔵市」を開催し、町や農業の魅力を発信している。
國分さんが代表を務める「伊達の里山文化を守る会(会員3人)」が主催し、2年前に開始。國分さんは「新鮮な農産物や、地元の特産品をより身近に感じてほしいと始めました」と話す。
▼値上げラッシュが止まらない。頻繁に買う食料品に関心が集まるが、日用品や衣料品、光熱費に携帯料金なども同様。長らく使った家電の買い換えを検討したが、あまりの高値に先送りを決めた。
▼原材料費や人件費など生産コストの上昇分の適正な価格反映は、生産継続に不可欠だ。他方、生産段階の価格上昇に連動して単純に率で加算される手数料などにはモヤモヤ感も。
▼例えば、全国のスーパーの米平均価格(農林水産省公表)は、5キロ当たり約4200円で前年同期の約2倍になった。1俵(60キロ)換算で5万円を超える水準。精米価格でかつ需給混乱下とはいえ、農家の手取りにいくら上乗せされているのか。また、店頭価格が2倍ということは消費税の負担も2倍に。消費税は流通段階の取引にも課せられている。物価上昇に伴う増税も重くのしかかる。
▼先週末、首都圏のスーパーでキャベツが1玉88円で販売されていた。気候変動が激化する中、農産物の安定生産は当たり前ではない。高騰時には数円単位の上昇でも過剰なまでに報道する一方、下落・低迷したら見向きもしない。そんなマスコミの姿勢にも問題を感じる。